歯周治療において最も大切なことは、患者さんと歯科医療従事者が協力して長期的な口腔健康を目指すことです。歯周病は慢性疾患であり、一度の治療で完治するものではありません。そのため、継続的なケアと定期的な受診が不可欠です。
歯周治療の基本的な流れは以下の通りです:
1. 初期治療(歯石除去、ブラッシング指導など)
2. 再評価
3. 歯周外科治療(必要な場合)
4. メインテナンス
この過程を通じて、患者さん自身が自己管理能力を高めることが極めて重要です。歯科医師や歯科衛生士は専門的な治療やアドバイスを提供しますが、日々のセルフケアは患者さん自身が行う必要があります。
また、歯周病は全身疾患との関連も指摘されているため、口腔内だけでなく全身の健康にも注意を払うことが大切です。喫煙、糖尿病、ストレスなどの要因にも配慮し、必要に応じて他の医療機関とも連携しながら治療を進めます。 |
|
歯周組織は、歯を支える重要な組織群です。主に以下の4つの組織から構成されています:
1. 歯肉(しにく):
歯の周りを覆う粘膜組織です。健康な歯肉はピンク色で引き締まっており、歯と歯肉の間に隙間(ポケット)はほとんどありません。
2. 歯根膜(しこんまく):
歯の根と歯槽骨の間にある薄い結合組織です。歯を支え、衝撃を和らげる働きがあります。
3. セメント質(しつ):
歯の根を覆う硬い組織で、歯根膜の線維が埋め込まれています。
4. 歯槽骨(しそうこつ):
歯を支える顎の骨です。歯根膜を介して歯を固定しています。
歯周病が進行すると、これらの組織が徐々に破壊されていきます。初期段階では歯肉の炎症(歯肉炎)から始まり、進行すると歯槽骨の吸収が起こり、最終的には歯の喪失につながる可能性があります。 |
|
歯周治療の目的は、これらの組織の健康を回復し、維持することにあります。 |
日本歯周病学会は、科学的根拠に基づいた歯周治療のガイドラインを提供しています。当院では、この指針に従うことで、標準化された質の高い治療を提供することができます。
主な治療指針は以下の通りです:
1. 診査・診断:
詳細な問診、口腔内診査、エックス線検査などを行い、歯周病の進行度を正確に診断します。
2. 治療計画の立案:
患者さんの状態に応じた適切な治療計画を立てます。
3. 歯周基本治療:
プラークコントロール、スケーリング・ルートプレーニング、咬合調整などを行います。
4. 再評価:
基本治療の効果を評価し、追加の治療が必要かどうかを判断します。
5. 歯周外科治療:
必要に応じて外科的処置を行います。
6. メインテナンス:
定期的な検診と専門的ケアを継続します。
これらの指針は、個々の患者さんの状態に応じて柔軟に適用されます。 |
|
歯周治療の成功の鍵を握るのは、患者さん自身によるセルフケアです。日々の適切なオーラルケアが、歯周病の予防と治療に最も重要な役割を果たします。
効果的なセルフケアには以下のポイントがあります:
1. 正しいブラッシング:
適切な歯ブラシ、歯磨き方法を習得し、毎日実践することが重要です。 |
|
2. 歯間部の清掃:
フロスや歯間ブラシを使用し、歯ブラシだけでは到達しにくい部分も丁寧に清掃します。歯周病や虫歯の好発部位は歯間部です。往々にして、歯間部の清掃は皆さん疎かです。これも歯科衛生士が丁寧に指導を行います。 |
|
歯科医師や歯科衛生士は、患者さんの口腔状態に合わせた最適なセルフケア方法を指導します。これらの指導を忠実に守り、日々実践することが治療の成功につながります。 |
SRP(スケーリング・ルートプレーニング)は、歯周治療の基本となる重要な処置です。主に歯科衛生士が行いますが、症例によっては歯科医師が担当することもあります。
SRPの目的は以下の通りです:
1. 歯石や歯垢の除去
2. 感染した歯根面の滑沢化
3. 歯周ポケットの減少
4. 歯肉の炎症の軽減
SRPは通常、局所麻酔下で行われ、専用の器具を使用して歯面や歯根面の清掃と平滑化を行います。この処置により、細菌の付着しにくい環境を作り出し、歯周組織の回復を促します。 |
|
SRPは一度の処置で完了するものではなく、複数回のセッションに分けて行われることが一般的です。また、処置後は一時的に歯の知覚過敏が生じることがありますが、これは時間とともに改善されます。 |
歯周基本治療(SRPなど)で十分な改善が見られない場合、歯周外科治療が検討されます。歯周外科治療の主な目的は、歯周ポケットの除去や骨欠損部の修復など、非外科的治療では達成困難な部分にアプローチすることです。
主な歯周外科治療には以下のようなものがあります:
1. フラップ手術:
歯肉を剥離し、歯根面の徹底的なクリーニングと不良肉芽の除去を行います。
2. 歯周組織再生療法:
フラップ手術に追加して、薬剤や骨材などを使用し、失った歯周組織を再建する治療になります。
3. 歯周形成外科:
セルフケアが困難な部位に、歯肉移植や切除術を施し、清掃しやすくします。
歯周外科治療は、より侵襲的な処置であるため、慎重に適応を判断する必要があります。治療後は、より一層の注意深いセルフケアと定期的なメインテナンスが重要となります。 |
|
7. 治療後も歯周病から守る治療 “SPT” とは |
SPT(Supportive Periodontal Therapy)は、歯周治療後の長期的な維持管理プログラムです。
歯周病は再発のリスクが高い疾患であるため、治療後も継続的なケアが不可欠です。
SPTの主な目的は以下の通りです:
1. 歯周病の再発防止
2. 口腔衛生状態の維持・向上
3. 早期の問題発見と対処
SPTでは、通常以下のような処置が行われます:
1. 口腔内診査:
歯周ポケットの深さ、出血の有無、動揺度などをチェックします。
2. 専門的歯面清掃:
歯科衛生士による丁寧な歯面清掃を行います。
3. セルフケアの確認と指導:
患者さんのホームケアの状況を確認し、必要に応じて再指導を行います。
4. 必要に応じた処置:
問題がある部位に対して、スケーリングなどの処置を行います。 |
|
SPTの頻度は、患者さんの状態やリスク評価に応じて個別に決定されます。一般的には3〜6ヶ月に1回程度の間隔で行われることが多いですが、より重症な患者さんには頻繁な受診が必要な場合もあります。
SPTは歯周病治療の成功を長期的に維持するための重要な要素です。定期的にSPTを受けることで、歯周病の再発を防ぎ、健康な口腔状態を維持することができます。また、他の口腔疾患の早期発見にもつながり、総合的な口腔健康の維持に貢献します。
歯周病治療は、単に症状を改善するだけでなく、患者さんの生涯にわたる口腔健康を支援することを目指しています。そのためには、歯科医療従事者と患者さんが協力し、継続的なケアを行っていくことが不可欠です。SPTを通じて、健康で美しい口元を長く保つことができるのです。 |
|
|
|